「愛するからこそ、創り続ける」
韓国の大学で25年間にわたり教鞭をとり、美術団体の会長も務めたユン・ソベ氏。来日後、エイベックスでのクリエイティブな仕事を経て、彼が人生の第二幕の舞台に選んだのは千葉県旭市でした。 旭市内の古民家ゲストハウスでの3年間の活動を経て、現在は海辺の廃墟を自らの手で再生させた「風の色美術館」を運営しています。 「ボロボロのものを再生させるのが好き」と語るユン氏。アーティストの感性と実業家の視点を併せ持つ彼が、この地で見つけた「創作の源泉」と、常に自己を更新し続ける表現者としての誇りを伺います。

古民家から海辺へ。手を動かし、価値を創り出す
── まずは、日本、そして旭市へ来られた経緯を教えてください。
韓国の大学で美術とデザインを25年教え、国際交流にも尽力してきましたが、13年前に「人生の第二幕は海外で」と考え来日しました。 当初は東京や横浜を拠点にエイベックスでトップアーティストのプロジェクトに携わっていましたが、縁あって旭市へ移住しました。 最初に市内の古民家を借りてゲストハウスを立ち上げ、3年ほどアトリエ兼ゲストハウス運営の活動を行いました。
── その後、現在の「風の色美術館」の場所に出会われたのですね。
はい。2023年から現在の場所での活動を始めました。 最初は竹藪に覆われ、海すら見えない廃墟のような状態でしたが、私は古いものを修理し、再生させるプロセスに大きな喜びを感じます。当時の廃墟物件をみたときに、とてもワクワクしたことを覚えています。 自ら竹を伐採し、2年かけて専門外のコンクリート作業なども行い、ホテルとレストラン、アトリエを備えた空間に作り変えました。

口コミだけで年間5,000人が訪れる名所に
── 「風の色美術館」には、現在どのような方々が訪れていますか?
積極的な広報はしていませんが、昨年はレストランに約5,000人、宿泊には約900人のお客様がいらっしゃいました。 私は「ビジネスのために作るのではなく、純粋に自分が好きだから作る」ことを大切にしています。 まず、自分自身が感動できる魅力的な空間を全力で整える。その情熱が形になれば、計算しなくても人は自然と集まり、ビジネスは後からついてくるものだと考えています。

── 現在は新しい美術館も建設中だそうですね。
はい。2026年中の完成を目指して準備を進めています。 この場所を、訪れる人が日常を忘れ、アートに浸れる場所にしたい。私にとっての経営とは、情熱の結果が形になったものなのです。
新しいものを生み出し続けることこそ、アーティストの誇り

── この地域で活動する中で、どのような可能性を感じていますか?
この地域には、まだ活用されていない素材がたくさんあります。 例えば、鉄骨のスクラップなどをアートや建築の素材として再生させたい。地域の若者や世界各国のアーティストが、この地の資源を使って主体的に活動できる仕組み作りにも関心があります。
── ユンさんご自身は、今後どのような活動を予定されていますか?
2026年までに風の色美術館や現在建設中の美術館を完成させ、2027年からは私自身の本分である「創作活動」にさらに時間を費やしたいですね。 私は、アーティストを名乗るならば「常に新しいものを生み出し続けること」が何より大切だと考えています。 多忙だった昨年も約300点の新作を制作しましたが、過去の作品を並べ続けるのではなく、常に自分を更新し続けたい。そのために描き続けていきます。 その鮮烈なエネルギーこそが、地域を刺激し、活性化させる源になると信じています。

「再生」のダイナミズムを共有できる仲間とともに
── 一緒に働く方や、この場所に関わる人に求めることは何でしょうか?
「変化を楽しみ、価値を創り出す心」です。 誰も見向きもしなかった場所を、人が集まる場所に変える。与えられた環境をただ受け入れるのではなく、「自分の手でより良く変えられる」と信じて動ける方と一緒に働きたいですね。 人と人の関わりは強くもろいものです。一線を越えてしまうと上手くいかなくなることも多々あります。適切な距離感と相対する人との心地良い関係性をつくっていけると嬉しいです。職種に関わらず、自分の仕事に対して常に「もっと良くできないか」と探究し続ける姿勢があれば、それはもう立派なアーティストだと思います。

地元の癒やしと、インプットの旅
── 多忙な日々の中でのリラックス方法を教えてください。
思考をリセットしたい時は、地元の「旭の湯」へ行きます。ゆっくりお湯に浸かりながら、ぼーっとしたり、頭を整理したり、創作活動について思いを馳せたり。この時間がとても大切です。
── 旅もお好きだと伺いました。
カバン一つで日本中を旅して、スケッチをするのが好きです。 外の世界を見て新しい刺激を受け続けることが、また次の創作へのエネルギーになっています。

(取材後記)
『竹藪を切り拓いたら、海が見えた。』
ユン氏の言葉は、リスクの中に価値を見出すアーティストの真理を突いています。 旭市での古民家再生から始まり、現在の美術館建設に至るまで、彼は常に「無から有」を生み出してきました。 現状に満足せず、毎年何百もの新作を生み出し続ける彼のストイックな姿勢は、地域の表現者たちへの静かな、しかし力強いエールのように感じられました。屛風ヶ浦のお洒落なカフェレストランとして現在は注目を集めていますが、その背景にあるのは間違いなくユン氏のあくなき情熱とアートの力を信じる長年の実績に裏打ちされたものだと確信しました。風の色美術館に一歩踏み入れたときにパワーを是非皆様にも感じていただけることを願っています。
風の色美術館 併設レストラン Cafe Lounge kazenoiro
所在地: 〒289-2704 千葉県旭市上永井1242−2
営業時間:
水曜日 11時00分~16時00分
木曜日 11時00分~16時00分
金曜日 11時00分~16時00分
土曜日 11時00分~16時00分
日曜日 11時00分~16時00分
月曜日 11時00分~16時00分
火曜日 定休日